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天然灰汁発酵建て
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 歴史で振り返ったように、藍染めも当初は、藍の生の葉っぱを用いた「生葉染め」が主流だったと考えられます。当然、生葉染めは夏から秋の蓼藍が生い茂る季節にしか出来ません。そこで人々は、藍の葉を保存しておくために、乾燥させるようになります。藍が、古来から染料としてより薬として用いられていたことを考えれば、保存のために乾燥するというのも、しごく当たり前のことだったのかもしれません。
 その乾燥した葉は、秋から春にかけて、藍師の手により、寝床に寝かされ、水やり切り返しを繰り返し、発酵してスクモとなります。スクモは、大量の乾燥した葉を発酵分解することで、藍の成分を凝縮させたものです。これは、嵩が減ることで、保管、移動に便利になルだけでなく、藍染めの染液を作るために最適な技術革新でした。藍の成分が凝縮されたスクモを用いた発酵建ては、生の葉を用いて染める生葉染めに比べ、布や糸をより濃く鮮やかに染め、しかも堅牢にすることが出来ます。
 実は、藍という植物は、他の草木染めとは異なる大きな特徴があります。草木染めの多くは、その葉や樹皮、根などを煮出し、その染め液と色を定着させるための媒染剤を用います。しかし、蓼藍の場合、藍の葉にもともと住み着いている還元菌を使い、発酵させる藍建てという作業を行います。この藍建てという作業は、木灰からとったアルカリの液を使い、菌の活動を助けるために日本酒やフスマを加え、最適な温度を保つことで、発酵が進み、初めて染液が出来るというもので、化学薬品等を一切使わないこの技法は、天然灰汁発酵建てと呼ばれています。天然灰汁発酵建てで得られた染液の中では、藍の色の成分は、アルカリ状態でまだ青くはありません。その染液に浸けられた糸や布が、空気に触れることで酸化反応が起き、藍の成分が繊維としっかり固着し、そこで初めて、あの鮮やかな藍色を発色するのです。
 具体的には、スクモの状態では、藍色の成分であるインディゴは、水に溶けない顔料の状態で、このままでは布にしみこまないため、染色もできません。このスクモに樫の木などの堅木からとったアルカリの高い灰汁を加え、スクモに住み着いている還元菌のえさとなる、お酒やフスマを加えて加温します。25度から30度に保温しながら、2~4日発酵を待ちます。このとき、不溶性のインディゴは、還元菌によって、水溶性のロイコ体インディゴ(還元型のインディゴ)に変化していきます。この還元菌は強アルカリを好みますが、発酵が進むにつれ、アルカリ徐々に落ちていきます。腐敗を促す他の細菌の活動を抑えつつ、温度とアルカリ度を発酵、発色の様子を見ながら、維持していきます。発酵が進むにつれ、石灰やフスマを適宜施し、良好な発酵状態を維持しながら灰汁で嵩上げし初めて布を染めることが、できる染液となります。
 こうして出来た染液の中では、ロイコ体インディゴが水に溶けた状態となっていますが、この染液を瓶の中で掻き混ぜると、空気に触れた泡が見事な藍色の花を咲かせることとなります。
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撹拌作業
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藍の華
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